恋愛にキス以上はいらない。「ノンセク男子」の本音

恋愛にキス以上はいらない。「ノンセク男子」の本音
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「今回の取材話をもらったとき、『またこっち系の取材?』って思わずマネージャーさんに漏らしちゃいましたよ。『最近セックスの取材しかこねえじゃねーか』って(笑)」

ビックサイズのセーターと同じ色をしたピンクの髪が、冗談を言いながら楽しそうに弾む。今年で26歳、自分と同い年の彼がまとう空気感はどこまでも自由で、あこがれとちょっとの嫉妬心を抱いた。私なんて、みんなと同じような黒髪に同じような服で武装して、毎日人並み外れないよう働くことで必死なのに。

“ノンセクシュアル”。恋愛はするけど、セックスを求めない価値観をさすらしい。それが今回インタビューした、モデル・こんどうようぢさんの恋愛のカタチ。彼のめずらしい嗜好に多くのメディアが飛びつき、興味をそそるようなタイトルやテーマを添えて発信していく。正直、うちのメディアだってそのひとつだ。いまだってそのひとつ、なんだけれども。

■彼の恋愛に“セックスは必要ない”理由

「意外とませてるって思われそうだけど、はじめて女の子と付き合ったのは小学生くらいだったかな。いま思えば“付き合っていた”って感じでもないんですけどね。『好き』『私も好き』『わぁー!』みたいなやりとりをしただけ(笑)」

私が高校生だったころ、こんどうさんは当時流行した「原宿系」のまさにアイコン的存在だった。同級生の男女が彼のブログを見ては、こぞってファッションを真似していたのが懐かしい。

で、田舎で死ぬほどダサい高校生をやっていた私は、いまと同じように羨望と少しの嫉妬心を抱いていたっけ。そりゃあ、もう一方的に。「読モってモテそうで、楽しそうで、なんかいいなぁ」とか。だから大人になって彼の恋愛観を知り、正直驚いた。

「最後に彼女がいたのは、中学生でした。小学生のときと何も変わらなくて、彼女とその妹とドッジボールをして遊ぶとかのレベル。いまの中学生たちが想像するような『付き合う』ですらなかった気がします。いま考えても『あれは付き合ってたのか?』って感じ」

そんな彼が「自分の恋愛にセックスは必要ない」と気づいたのは、高校生のときのこと。

「そのくらいの年齢って、みんながセックスに興味を持ちはじめて、男同士でそういう動画を見たりするじゃないですか。そこで性行為を綺麗なものとして認識できなかったんです。ましてやそれが最大の愛情表現だとも思えなかった、僕は

じゃあこんどうさんにとってのセックスって、何?

「子どもを作る行為でしかない。もともとそのための行為なんでね。恋愛でする意味は……、したことがないから正直わかんないです」

記事のなかで「普通」って言葉はなるべく使いたくないのだけど、まあ同世代の私からしたらこんどうさんの恋愛観は、「普通」とちょっとちがうのかもしれない。でも、結局のところそれってなんなのだろう。ちなみに、彼の考える「普通」はこんな感じ。

「僕が抱く『好き』は、プレゼントを贈り合って、ハグして、一緒にいたいと思うこと。そういうのじゃダメなのか。きっと女性は『セックスしないなんて私のこと好きじゃないんでしょ』とか思うんだろうな。でも、そういうことじゃないんです」

見え隠れするのは、いたずらっぽい笑顔の裏にある真っ直ぐな芯の部分。

「僕たちのような恋愛観の人間には、僕たちなりの愛情表現がある。だから、“セックスしない”という部分だけを見てほしくない

■経験がないのは「カッコ悪いこと」なのか

それでも私たちは、誰が決めたのかもわからない「普通」を好む。学生時代を思い出せば、恋愛経験が他人より少ないのはちょっと恥ずかしいことで、なんとなく見栄をはりたがる自分がいた。それは大人になったいまでも変わらない。「周囲のみんなが結婚しはじめたから、私も早く結婚しなきゃ」とか。相変わらずの私だ。

“人と同じ”ほど楽なことはない。でも、同時にそれってなんか息苦しい。

「学生時代、友だちはみんな恋人がいるのに僕だけ経験がないっていう時期もありました。『もっとたくさん恋愛したほうがいいよ』とアドバイスをもらうこともあったけど、他人と比べて自分を変えようとは思わなかったですね。だって、僕の価値観では経験がないこと=恥ずかしいこと、ではないんです。ましてやいっぱいヤッてるのがカッコいいという価値観でもない。童貞ってそういう基準で捨てるもんでもないしね」

――でも、普通とちがうのって怖くないですか?

無意識に本心をぶつければ、返ってきたのは「僕にとってはこれが普通のことだから」という当たり前の答え。26歳、同い年。自分の狭すぎる視野が恥ずかしくなった。

それに他人は他人、自分は自分でしょ? 合わせることももちろん大事な感覚だろうけど、僕はしない。それだけ」

■“受け入れないことを受け入れない”世の中になってない?

「自分がLGBTQに入るのかはわかんないけど、そこに分類される方から、いまは昔よりも寛容な時代になっていると聞きました。で、最近考えることがあるんです」

こんどうさんがこんな話を切り出したのは、「『ノンセク男子』と世間からラベリングされることをどう思う?」という質問を投げかけたとき。少し悩んでから紡がれたのは、私の狭い視野だけでは到底たどりつけない価値観だった。

「逆にそういうLGBTQを受け入れない人がダサい世の中になっているのも、どうなんだろうって思います。“受け入れない人を受け入れない”世の中になっちゃってる気がして。

まわりが受け入れてるから、自分も受け入れなきゃ。まわりがメイクする男子を認めるなら、自分も認めなきゃ、なんて思わなくていいんです。自分が『無理』と思うなら、無理のままでいい。まわりに合わせる必要なんてない。別に僕のことが無理なんだったら、無理と思ってもらっていいんすよ」

もちろん、それは卑屈でも屁理屈でもない。まっすぐな本当の気持ち。

みんなも自分の意見がまわりとちがうことに悩まないで。たしかに僕の価値観は周囲とちがうかもしれないけど、『まだそんな考えなの?』『古くない?』『考え方変えなよ』とは言いたくない。変な例えだけど、『タイプじゃない女の子と付き合いなよ』っておせっかいやいてるのと同じというか。そんくらいの感覚です」

こんどうさんにインタビューしようと思った理由を、正直に話そうと思う。

「セックスしない恋愛」という価値観がものめずらしくて、今回の特集「いろんな恋のカタチ」にピッタリの人だと思った。それで「セックスしないという選択肢もアリだよね」「みんなと同じじゃなくていいよね」なんて、押しつけがましい結論を発信しようとしていた。インタビューする前から勝手に。

でも、目の前の彼はその価値観を「受け入れなくてもいい」と言う。

きっと明日からの私は、なんだかんだまわりと同じような黒髪に同じような服を着て、いつもの通勤電車に乗っているのかもしれない。で、ベタな恋愛を好む。「人並み外れるのが怖い」って臆病な価値観も、あっていいような気がしたから。

「いろんな恋のカタチ」を許容できても、できなくても。この記事を読んだあなたが、どうか自分らしい恋のカタチにめぐり合えたら。結論はもう、それでいいや。

(取材・文:井田愛莉寿/マイナビウーマン編集部、撮影:洞澤佐智子)

Source: マイナビウーマン