全性愛? 「パンセクシャル」とは何か。バイセクシャルとのちがいとは

全性愛? 「パンセクシャル」とは何か。バイセクシャルとのちがいとは
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「パンセクシャル」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

日本では「全性愛」などと訳されることがある。

「全性愛」は、男女ともに愛せる「両性愛」と何がちがうのか、と思う人も多いだろう。

これまで、LGBTQ+のなかでも語られることが割と少ないセクシャリティを取り上げてきたが、今回もそのうちのひとつ「パンセクシャル」について解説しよう。

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■パンセクシャルとは何か

「パン」とは、古代ギリシャの言葉で「すべての、あらゆる」という意味がある。

そのことから、パンセクシャルとは、相手のセックス(体の性)、ジェンダー(心の性)、性的指向、に関係なく好きになるセクシャリティのことを指す。

日本語では「全性愛」と訳されている。

英語圏では、パンセクシャルのことを「ジェンダー・ブラインド(Gender Blind)」と説明しており、人のジェンダーを認識しない人として解説されている。

◇パンセクシャルの意味、定義

パンセクシャルの人は、自分と同じジェンダー、またはちがうジェンダーの人を恋愛対象としているとされている。

しかし、パンセクシャルの人にとってセックスやジェンダーは無意味だ。

パンセクシャルを語るにはまず、「SOGI」を説明したほうがいいと思う。

☆SOGIとは

「SOGI」とは、「ソジ」「ソギ」と読む。

どの性別を好きになるか、または好きにならないかを示す「性的指向(Sexual Orientation)」と、自分のジェンダーをどう認識しているのかを示す「性自認(Gender Identity)」の頭文字をとった言葉だ。

「LGBTQ+」がセクシャルマイノリティの一部の人たちの総称であることとちがい、「SOGI」はすべての人を対象とした「性に関する見方」を指す。

 

パンセクシャルの人は、このSOGIを認識しない。

男性、女性、シスジェンダー(体の性と心の性が一致)、トランスジェンダー(体の性と心の性が不一致)、相手のセックスやジェンダーが何であっても、それを理由として人を好きになることがない。

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◇種類がいろいろある? 「バイセクシャル」とのちがい

バイセクシャル+とは

よく聞く言葉である「バイセクシャル」と「パンセクシャル」はどうちがうのか? を説明しようとすると、今度はさらにほかの用語も解説する必要が出てくる。

「バイ」という言葉は「ふたつの」という意味があり(自転車、バイシクルのバイと同じ)、大まかにバイセクシャルを定義すると、「男性と女性を恋愛対象にしている人」となる。

なぜ「大まか」なのかというと、近年ではバイセクシャル、またはバイセクシャル+と呼ばれ、説明する人によって定義が異なるからだ。

バイセクシャル+には、「パンセクシャル」「オムニセクシャル」「ポリセクシャル」「バイセクシャル」が含まれる。

☆オムニセクシャルとは

「LGBTQQIAAPPO2S」の中に出てくる「O」。「オムニセクシャル」と呼ばれ、実は日本語に訳すとこれもパンセクシャルと同じく「全性愛」になってしまう。

オムニセクシャルは、パンセクシャルに限りなく近いが、他者のセックスやジェンダーを認識し、理解した上で、すべてのセックスやジェンダー、セクシャリティを恋愛対象とする人を指す。

パンセクシャルの人が相手のセックスやジェンダーを認識しないのに対し、オムニセクシャルの人は、相手のセックスやジェンダーを認識した上で、すべてを恋愛対象としているところが、主なちがいだ。

☆ポリセクシャルとは

「ポリ」とは「複数の」という意味があり、「ポリセクシャル」はふたつ以上のセックスやジェンダーの種類の人を恋愛対象にしている人を指す。

たとえば、シスジェンダーとトランスセクシャルの男性、そしてXジェンダーの人を恋愛対象にしている人は、ポリセクシャルと言っていいだろう。オムニセクシャルとちがうのは、好きにならないセックスやジェンダーが存在するところだ。

 

人によっては「バイセクシャル」は、シスジェンダーの男女を恋愛対象にしている人を指す、と主張する人と、シスもトランスも含む男女を恋愛対象にしている人を指すと主張する人もいる。

実は、現在これに確定された定義が存在しない。なので、ここでは、「自分と同じ、または異なるセクシャリティの人を恋愛対象にしている人」と定義したいと思う。

◇パンセクシャルの人の特徴

私の周囲には、数人しかパンセクシャルの人が存在しないので、実感として何か特徴があるかと問われると、私の答えは「特にない」だ。

正直に告白すると、友人に「パンセクシャルの人、知らないかな?」と声をかけたら本人がそうだった、というくらい、特に目立った特徴があるとは、私には思えない。

強いてひねり出すとしたら……セクシャリティの特色を反映して、オープンマインドな人が多いのかもしれない。

■パンセクシャルかどうかは自分でチェックできる?

歌手のジャネル・モネイさんは、雑誌『ローリング・ストーン』のインタビューで

「以前は自分をバイセクシャルだと思っていたけど、パンセクシャルのことを読んで、これは私のことだ! と腑に落ちた。これからも新しい自分を発見していきたい」

と語っていた。

パンセクシャルの最大の特徴は「相手のセクシャリティを認識しない 」という部分であり、この状態は本人がどう認識するのかどうか以外に、判断基準がないと思う。

当人が、相手のセクシャリティを認識できるか否か、また、好きになる相手のセクシャリティが好きになる要因になっているか否か、を実感できるかがキーになる。

■パンセクシャルという生き方

日本では、オムニセクシャルという概念がほとんど浸透しておらず、私の予想では、本当はオムニセクシャルだが、自分をパンセクシャルだと思っている人がたくさんいるのではないかと思う。なぜなら、日本語に訳すと両者「全性愛」となってしまうからだ。

日本版ウィキペディアでも、

「全性愛(ぜんせいあい)、パンセクシュアリティ(pansexuality)、オムニセクシュアリティ(omnisexuality)とは、男性/女性の性の分類に適合しない人々も含め、あらゆる人々に恋をしたり、性的願望を抱いたりすること。全性愛の性質を持っている人を全性愛者(ぜんせいあいしゃ)、パンセクシュアル(pansexual)、オムニセクシュアル(omnisexual)、パンセクという。」

とあるように、一緒くたにされる傾向がある。

英語版ウィキペディアのPansexualのページと比べると、なんと、およそ7000文字も差があるのだ。

しかも、LGBTQ+系のウェブサイトをいくら探しても、日本語のサイトでオムニセクシャルについての正しい情報を得ることができない。

正しい情報を得られないと、自分が一体何者なのかわからない状態で生きることになる。「なんとなく似たもの」を自分だと認識するようになるのではないだろうか。

パンセクシャルという概念が広く認知されてはじめて、自分がバイセクシャルではなくパンセクシャルなのだと認識することと同じように。

◇パンセクシャルの恋愛

パンセクシャルの恋愛には、セックス、ジェンダーが関わってこない。他人を愛する要因に、それらが含まれないからだ。

そして、Xジェンダーに次いで「誤解されやすさTOP3」に入る。彼らの恋愛については誤解されがちだと思う。

なぜなら、異性と付き合っているときは、外側から見たらシスジェンダーヘテロセクシャル(※ヘテロセクシャルとは異性愛者のこと)に見えるし、同性と付き合っているときは、同性愛者に見える。両性と付き合っていれば、バイセクシャルにも見えるし、もしかしたらポリセクシャルに見えるかもしれない。

バイセクシャル+の人はそれぞれ、自身のことを自分がどう認識しているかがキーであり、これも、Xジェンダーと似ているように思う。

編集部の質問に「恋愛対象に性別を意識しないというのは、どういうことなのでしょうか?」というものがあった。

厳密にいうと、「性別を意識しない」というよりも、「相手を好きになる要因のうちに、性別が含まれない」ということではないだろうか、と私は思っている。

極端な例だが、犬、猫、うさぎ、といった「種」を好きか嫌いかの話をするときに「私は絶対に猫のメスが好き」と言う人はあまりいないだろう。

それと似ていて、「人間」という「種」を恋愛対象としているというだけで、そこに性別などのセクシャリティは介在しないのだ。

そうすると出てくる問題がある。トランスセクシャルでヘテロセクシャル の人のように「男性(または女性)として、女性(または男性)に好かれたい」人を好きになった場合、その期待に応えることができない。

想像よりも大勢の人がセクシャリティに縛られていて、パンセクシャルの人はその規範の外側にいるので、理解されないことも多いだろう。

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■恋愛対象をただ“人間”としてとらえるのがパンセクシャル

「バイセクシャル」という用語は、随分市民権を得たように思う。

しかし、日本ではまだ「バイセクシャル+」や、そこに含まれる、パンセクシャル、オムニセクシャル、ポリセクシャルの存在は広く知られていない。

「全性愛っていっても、両性愛と何がちがうの?」となるだろう。

それは、性別二元論に基づいた発想だ。

「性はグラデーション」「LGBTQQIAAPPO2S」と言うように、セクシャリティはふたつではない。「男女」とひと口に言ったとしても、シスジェンダーもトランスジェンダーも存在するように。

パンセクシャルの人は、それらすべてをただ「人間」という種族、と認識しているだけだ。

この観念が広く認知されることで、自分を再発見できる人が増えてくれれば、物書き冥利に尽きるというものだ。

(豆林檎)

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※画像はイメージです

<参考・引用文献>

This is what it actually means to be pansexual | COSMOPOLITAN

LGBTではなく、なぜ「SOGI」なのか?人権という視点から、人間を人間として見るという「あたりまえ」を取り戻す | HUFFPOST

What’s the Difference Between Pansexuality and Bisexuality? | COSMOPOLITAN

【LGBT用語解説】パンセクシュアルとは?~バイセクシュアル・ポリセクシュアルとどう違う?~ | Job Rainbow for LGBTQ+

What is Bisexuality? | brc : Bisexual Resource Center

What does polysexual means? | Dictionary.com

全性愛 | ウィキペディア フリー百科事典

Source: マイナビウーマン