「恋人」という名前だけで繋がる関係はいらない

「恋人」という名前だけで繋がる関係はいらない
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「生まれてから24年間、一度も彼氏ができたことがないんだよね」

ある女の子のひと言に、その場にいた男性陣は驚いた。

彼女の名前は優子(仮名)。1カ月前に友人が開いた合コンで知り合った。その合コンでは、男性とはあまり盛り上がらず、その場にいた優子と初対面にして意気投合。で、今度は2人で一緒に別の合コンにきていた。

男性たちは優子に「もしかして理想高い?」「それ本当?」と質問攻め。たしかに、年齢=彼氏いない歴の人に出会うと、誰しもびっくりするかもしれない。しかも優子は常に笑顔で、誰にでもオープンな性格で、美人だから驚くのも無理はない。

優子は私にコッソリと「ねぇ、早く切り上げて2人で飲みに行かない?」と伝えてきた。今回の男性たちは、みんなやさしくて真面目そうだが、優子の好みのサーファー系男子とはほど遠い。私もそれに賛同し、話が途切れたタイミングで「私たち明日朝早いので……」と適当な理由をつけて、合コンを強制終了させることに。男性たちには名残惜しそうな姿を見せつつ、その場を離れた。

「私、この近くで餃子がおいしいお店知ってる!」

フットワークが軽い優子は、普段飲み歩いていることもあって、お店選びがとても得意。オススメの飲み屋を次から次へと教えてくれる。そんな彼女と一緒にいればいるほど、疑問が深まるばかりだった。

優子は、なぜ一度も彼氏ができたことがないのか。

マイナビウーマン編集部で働く私は、直感で「これは何かの記事になりそうだ」と思った。半分興味本意ではあったが、取材も兼ねた私と優子の女子会がはじまった。

■片思いの彼に言われた「お前も、もうちょっと男と遊べば?」

席についてすぐに、優子オススメの餃子とハイボールを2杯頼んだ。先ほどの小洒落た合コンのお店とは雰囲気がガラッと変わり、私たちの肩の力がふっと抜ける。

「男性陣ぎょっとしてたね。あんなに驚かなくてもいいのに! でも、正直私も気になってた。なんで優子は今まで彼氏がいないの?」

お酒もまだきていないのに、いきなり核心的な質問をしてしまった。しかし優子は、フランクに自身の恋愛話を語りだす。

「なんでだろうね~。あ、でも好きな人はいたよ! 6年前になるけど、はじめて本気で人を好きになったの。彼は大学時代の友人で、まさに理想の男性。背が高くて体型もガッチリしていて色黒で、声も低くて男らしかった。大人数で遊ぶこともあったし、2人でお店や彼の家で一緒にお酒を飲むこともあったかな。でもある日、いつも通り彼の家で飲んでいたら、流れでそういう関係になっちゃって。好きだったから断れなかったし、好きとも言えなかったんだよね」

「えええ!  “はじめて”関係をもった人が、その男性だったんだ……。でも、そんなに仲がよかったのに、なんで付き合わなかったの? 当時、彼に恋人がいたとか?」

「そのときはいたみたい。でも好きな人に会えることがうれしくて、私も断れなかった。数カ月後に彼女と別れたって聞いたから、ちゃんと彼に気持ちを伝えようと思って告白したの。だけど返事は『別れたばかりだから無理』のひと言」

「“別れたばかり”は絶対に理由じゃない……」

「そのあとも家に呼ばれる機会が多々あって、男女の関係は1年くらい継続してた。切ない気持ちでいっぱいだったけど、心の奥底でいつか付き合えるときがくるかもって期待していたところもあったかもね。でもさすがにこのままの関係はよくないと思って、2人で会ったときに『今の関係、もうやめない?』って言った」

ついさっき席に運ばれたばかりのグラスが、早くも空になりかけている。優子は、店員に大きい声で「ハイボールもうひとつ!」と叫んだ。ネギ塩がたっぷり乗った餃子を箸でつまみながら、優子はさらに声量を上げて衝撃的なエピソードを話しはじめる。

「でも聞いて!!  彼ってばそのあと、呆れた顔で『お前も、もうちょっと男と遊べば?』って言ってきたの!」

■ムキになって、1年で8人の男性と遊び倒す毎日

「彼の言葉に、私も『じゃあ遊ぶわ!!』ってついムキになっちゃったんだよね。その言葉がきっかけで私の生活が変わって、1年で8人の男性と遊んだかな? 家には全然帰らなかったし、ナンパには片っ端からのるし、とにかくお酒と男に溺れていて……。今思えば荒んだ時期だった」

「1年で8人!? 危なすぎ!! その8人は全員遊びで終わったの? それともちょっといいなって思う人はいた?」

「8人のなかに、いいなって思う人はいたよ。ノリで相席居酒屋に行って出会った人とか。居酒屋で連絡先を交換して、後日2人で会って終電近くまで飲んでいたら、まだ飲み足りないから家にこない? って言われた。私も酔っぱらっていたから、つい彼の家に行っちゃったの。案の定、男女の関係になった(笑)。関係を持った2週間後に私から酔った勢いで告白してみたけど、『元カノのことが忘れられないから、付き合う気はない』ってまたしても振られたなぁ」

「男性の家にホイホイついてっちゃダメだって! DVD観ようとか、何もしないからとか、言葉巧みに家に連れ込もうとする人っているけど、全部ウソだから! 絶対に目的それじゃないから!!」

あまりに衝撃的な話が続くものだから、私の目はずっと点だったと思う。でも、優子はずっと笑いながら、過去の恋愛話を淡々と話していった。

「全部昔の話ね。今はもう遊んでないよ。でも、当時はお誘いに対して断ることを知らなかった。誘われたらなんでもOKのひと言で返していたから」

■彼女が男遊びをやめた本当の理由

その後も、海でナンパされた話や、マッチングアプリを計5つ使ってひたすら男性と会っていた話……など、とても記事には書けないようなエピソードのオンパレード。

「……いくつか話を聞いてわかったけど、どの男性も女慣れしているよ。まあでもわかる。そんな余裕も含めて女子は、危ない男性に惹かれちゃうときもある。でも美人な優子なら、モテそうだけどね」

「私のことを好きって言ってくれる人は、かわいい系や草食系ばかり。全然私のタイプじゃなくて(笑)。たとえば学生時代の男友だちと一緒に飲んでいて、終電を逃した私を家に泊めてくれたことがあったの。今までの男性は、泊まった日に手を出してきたけど、彼はちがった。私に一切手を出さなかったの! はじめて大事にされて、感動した。そのあと夏祭りに誘われて、一緒に行ったこともあったよ」

「その男性、すごく誠実な人! そういう人と付き合ったほうが絶対幸せになれるって!!」

「一瞬その人に惹かれたときもあったけど、やさしいだけの人に魅力を感じないのもあるかも。たしかにいい人ではあるけど、なんかちがうんだよね。好き好きって言い寄られると、無理!! ってなっちゃう」

「……私の友だちカップルなんて、お互いに『好き』って気持ち悪いほど言い合っているよ(笑)。なんだか、ここまで優子を変えてしまった最初の男性が憎くなってきた。でもそれだけ遊んでいたのに、何がきっかけで男遊びをやめようと思ったの?」

「趣味のダンスにのめりこんだのが理由かな。もともとダンスはしていたけど、ある大会ではじめて私が振り付け担当になったことがあったの。いつもはただ振り付けを教えられて踊るだけだったから、はじめてのリーダーポジションはうれしい反面、不安な気持ちでいっぱいだった。任されている以上、みんなの期待に答えられるよう、毎日のように深夜練習もしたなぁ。ダンスの時間は、自分の悩みを忘れられるし、踊っている間はLINEやSNSも見なくていいし、本当に気が楽で素になれた。そしたら男性とも縁が切れていって、男遊びもしなくなったんだよね」

■「恋人」という名前だけで繋がる関係はいらない

「なるほど! 趣味の時間が充実したから、優子は男性に依存しなくなったんだね。でも男遊びは卒業したものの、相変わらず自分に振り向いてくれなそうな男性ばかりにチャレンジしていない? 本当に彼氏がほしいなら、どこかで妥協しなきゃ!」

「自分でもそう思う(笑)。それでも私は、男らしくて引っ張ってくれる粗野な男性が好きなの。誰でもいいわけじゃなくて、本当に好きになった人と付き合いたい

「付き合う上で、それが絶対に譲れない条件なんだね。でも24年間彼氏がいなくて、とりあえず誰でもいいからつくろうって考えたことはないの?」

もし、生まれてから一度も男性と付き合ったことがなくて、自分のことを好きと言ってくれる男性がいたら? 「一度も付き合ったことがない」という事実を塗り替えるために、最初はとりあえず誰でもいいから付き合ってしまうもの。そんな私の凝り固まった考えを、優子はあっさりと否定した。

「う~ん、そもそも彼氏がいる=幸せっていう考え方がよくわからないんだよね。だって、どこかに遊びに行きたいときとか、相談したいことがあるなら女友だちでいいし、趣味もあるから退屈もしない。家に帰れば、両親や妹、ペットの猫だっているしね。別に結婚を焦っているわけでもないから、誰かに選ばれるのを待つんじゃなくて、私が選びたい。理想が高いのもあるかもしれないけど、何年かかっても絶対に本当の恋を見つけるんだ」

■本当に好きな人と、自分らしい恋愛をしてほしい

これが私と優子の女子会での会話。大好きなハイボールを片手に、今までの恋愛事情をたくさん話してくれた彼女は、明るくて常にケラケラと笑っていた。「お兄さん! もう一杯!!」と、さらにグイグイ飲む姿は、変に強がっているわけでもなく、凛としていた。

「なんで彼氏いないの?」

私が序盤で優子に投げかけた、上から目線な質問。私は勝手に「彼氏がいない=幸せじゃない」と決めつけていたのかもしれない。でも今の優子は、休日は趣味のダンスをしたり、友だちと飲んだりしていて、とても満たされている。過去には多くの男性と遊んでいた時期もあったが、今では自分の軸を強く持って、新しい恋を探している。

優子の話は、最初何かの記事になりそうだと思っていたが、11月からマイナビウーマンで立ち上げた特集「いろんな恋のカタチ」で掲げたコンセプトと一緒だった。そのコンセプトは、「誰かに決められた価値観じゃなく、自分らしく自由に恋愛しよう」だ。私は今回の話を、この特集内に組み込もうと決めた。

恋人の有無と幸せをひと括りにして、人と比べるのはちがう。だから、「みんな普通に彼氏がいるのに、私はどこかおかしいのかな?」と思わないでほしい。彼氏がいないことに焦って恋愛をしてほしくないし、まわりにすすめられた人だからといって無理やり付き合わなくてもいい。幸せは外から見えるものではなく、心の中にあるもの。他人から見た正解じゃなくて、自分の中に正解があればいいんだって、私は優子と話して感じた。

あなたは今、自分に正直な恋愛をしていますか?

(取材・文:マイナビウーマン編集部、イラストレーター:erika)

Source: マイナビウーマン